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最高裁判所第三小法廷 昭和46年(行ツ)15号 判決 1973年1月30日

大阪市城東区西鴫野町六丁目五五番地の二

上告人

安田工作株式会社

右代表者代表取締役

安田直次

大阪市福島区亀甲町一丁目三番地

被上告人

大阪福島税務署長

横井秀男

右当事者間の大阪高等裁判所昭和四一年(行コ)第一一八号法人税額等の更正決定取消請求事件について、同裁判所が昭和四五年一一月三〇日言い渡した判決に対し、上告人から全部破棄を求める旨の上告の申立があつた。よつて、当裁判所は次のとおり判決する。

主文

本件上告を棄却する。

上告費用は上告人の負担とする。

理由

上告人の上告理由について。

所論は、まず、旧法人税法(昭和二二年法律第二八号)九条五項、三一条の二第一項(昭和三七年法律第六七号による削除前のもの)の解釈適用の誤りをいうが、右の点に関する原審の判断は、正当であつて、その過程にも所論の違法は認められない。

所論は、また、本件補償金が移転料にあたるとした原判示を非難するが、原審が、右補償金の額の算出につき移転補償の算式が使用されたとの事実のみから、ただちに右判示をしたものでないことは判文上明らかであり、右判示の点に関する原審の認定判断は、原判決挙示の証拠関係に照らし、首肯するに足りるから、原判決に所論の違法は認められない。

論旨は、すべて採用することができない。

よつて、行政事件訴訟法七条、民訴法四〇一条、九五条、八九条に従い、裁判官全員の一致で、主文のとおり判決する。

(裁判長裁判官 関根小郷 裁判官 田中二郎 裁判官 天野武一 裁判官 坂本吉勝)

(昭和四六年 第一五号 上告人 安田工作株式会社)

上告人の上告理由

一、上告会社はかねてから法人税法第二五条(昭和四〇年三月三一日法律三四号の改正前法人税法をさす)の規定に基く青色申告の承認を受けている株式会社であつて昭和三七年度(自昭和三六年一二月一日至昭和三七年一一月三〇日)の法人税の法定申告期限たる昭和三八年一月三一日確定申告を提出した、同期の申告にかゝる更正決定が昭和三九年五月三〇日に被上告人大阪福島税務署長によりなされた、上告会社が課税庁より法定又はその他の方法で正式に意志表示を受けたのは、昭和三四年六月二五日付北税務署よりの欠損金額の修正通知書を受取つて以来の事である事を特に記す。

二、控訴審判決の中で「当該事業年度の法人税の更正または賦課決定の前提として過年度の誤つた損金を正当な金額に修正する事が許される事になる。こゝに過年度とは旧法人税法九条五項により五年である事は多言を要しない」とある、がこれは全くの法を曲解したもので、この旧法人税法九条五項とは「青色申告書を提出した法人の各事業年度開始の日前五年以内に開始した事業年度において生じた損金は第一項の所得の計算上これを損金に算入する」とあり、修正とか更正の除斥期間を定めたものでない。ただ単に欠損金の繰越控除を五年間にわたつて認める、つまりその期間にわたつてその成果を通算することが出来るとの事のみである。

三、被上告人の解釈は、税法の根本理念たる、各事業年度の計算の独立性、個別性を無視するものであつて、更正又は決定の期間の定めは旧法人税法第三一条の二、一項の規定があり、本訴の争点たる、上告会社の提出した、昭和三十四年度(自昭和三三年一二月一日至昭和三四年一一月三〇日法定申告期限、昭和三五年一月三一日)の青色申告に対し、申告義務の課せられた、所得に対し、つまり課税標準の更正をなさずして申告義務の無い繰越欠損金額の修正を行つたと主張する事自体理由なく、違法であり、控訴判決も当争点にふれて居ないのは法令の適用違いであるので違法な判決である。

四、上告会社が大阪市から受取つた補償金の中金三八二万九、〇〇〇円対価たる金額である、判決理由では移転補償算式を使用したので移転補償すなはち移転料であるとしているが、当時大阪市の規定として移転補償という名目の補償規定しか適用できなかつたので現実に当時の上告会社の建物の状態よりして対価補償である事は明らかである、当時の規定の不備により善意の協力者が不利の無き様にすべきであつて、その後この不備を修正して居る事がこれを裏付けると言える、いたずらに算式規定等の表面上のことにこだわつて事実をおゝいかくしていると言いたい。

五、第二審判決は上述のとおり、旧法人税法九条五項の解釈に誤りがあり、又旧法人税法第三一条の二一項によつて適法に処置されていない繰越欠損金額を適法とした事に対し不服であるので上告する

以上

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